
「賃貸の1階はやめとけ」という声を聞いて、物件選びに迷っていませんか?
賃貸物件ではデメリットの方が話題になりやすい1階ですが、2階以上の階にはないメリットも数多くあります。
この記事では、1階のデメリットとメリットを徹底比較し、年間コストや火災保険の観点も含めて解説します。
この記事を読めば、1階の良いところと悪いところがわかり、自分に合った判断ができるようになります。
これから賃貸の入居を検討している方や、1階への入居をして後悔しないか不安に感じている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
賃貸の1階が「やめとけ」と言われる理由7選【デメリット解説】

1階が敬遠される理由を防犯面から生活環境まで、具体的に解説します。
以下の7つのデメリットを確認していきましょう。
- 防犯面のリスク
- プライバシーの問題
- 虫の侵入が多い
- 湿気とカビ
- 騒音が気になる
- 日当たりが悪い
- 浸水被害のリスクがある
上記7つのデメリットについて、以下で詳しく解説します。
①防犯面のリスク
1階は窓からの侵入が容易なため、空き巣のターゲットになりやすいのが最大の懸念です。
警察庁の統計では、侵入窃盗は一戸建住宅が最多(約33%)だが、共同住宅も全体の約12%を占め、特に低層建物は注意が必要です。
3階建以下の低層マンション(アパート含む)は、4階建以上の建物と比較して侵入窃盗のリスクが高い傾向にあります。
1階に入居する場合はオートロック付き物件を選ぶなど、防犯対策に留意しましょう。
参考:警察庁<住まいる防犯110番>
②プライバシーの問題
道路や歩道に面した1階では、通行人の視線が部屋の中まで届きやすくなります。
プライバシーを保護するにはカーテンを閉める必要があり、開放感が損なわれる場合もあるでしょう。
また、1階のベランダに洗濯物を干すと通行人から丸見えになり、下着などの洗濯物から性別や生活パターンを推測される可能性や、盗難のリスクがあります。
外からの視線やベランダに洗濯物が干しにくいという点は、入居後に大きなストレスになる可能性があるため注意が必要です。
賃貸で1階への入居を検討する場合は、室内干しに十分なスペースがあるか、浴室乾燥機などの設備が充実しているかを事前に確認しましょう。

③虫の侵入が多い
地面に近い1階は、ゴキブリや蚊、クモなどの虫が侵入しやすい環境です。
とくに植栽が近い物件や、1階に飲食店がある建物では虫の発生頻度が高まります。
網戸の隙間対策や定期的な防虫剤の設置が欠かせません。
④湿気とカビ
1階は地面からの湿気の影響を受けやすく、とくに梅雨時期や秋の長雨シーズンにカビが発生しやすくなります。
床下に通気性がない物件では、結露も起こりやすいでしょう。
除湿機の稼働や定期的な換気が必要ですが、電気代がかさむ点も考慮しましょう。
なお、日常的な湿気やカビによる家財の被害は火災保険の補償対象外となります。
⑤騒音が気になる
1階への入居を検討する場合、建物内部からの騒音と外部からの騒音に注意しましょう。
1階は上階の足音や椅子を引く音、物を落とす音といった建物内部の騒音(生活音)が直接響きやすい傾向にあります。
さらに道路に面している場合、車の走行音や通行人の話し声といった建物外部の騒音(環境音)も聞こえやすくなるでしょう。
これらの騒音は、在宅勤務が多い方や音に敏感な方にとって大きなストレス要因となるため、防音性の高い物件選びやサッシの確認が必要です。
⑥日当たりが悪い
1階は建物自体の影や、隣接する建物、植栽によって日光が遮られやすくなります。
南向きの部屋でも、日中に十分な採光が得られないケースも少なくありません。
日当たりが悪いと部屋全体が暗く感じられるため、気になる方は内見の際に日当たりを事前に確認しましょう。
⑦浸水被害のリスクがある
2階以上の上層階と比較して、浸水被害のリスクがある点は1階のデメリットの一つです。
1階の物件では大雨や台風などの際に床上や床下浸水で、家財が被害を受ける可能性があります。
浸水被害が心配な場合は、国土交通省が公表しているハザードマップをあらかじめ確認し、浸水被害が発生しにくい地域で物件を探しましょう。
外部リンク:国土交通省<ハザードマップポータルサイト>
「賃貸の1階はやめとけ」派も納得!見逃せない7つのメリットとは

デメリットばかりが強調される1階ですが、実は上層階にはないメリットも多く存在します。
以下の7つの魅力を確認しましょう。
- 家賃が相場より安い
- 階段やエレベーター不要
- 専用庭やテラス付きの物件も
- 下階への騒音を気にしなくていい
- 夏場は涼しい
- 引っ越しが楽
- 災害時の避難が早い
それぞれの点について、以下で詳しく解説いたします。
①家賃が相場より安い
1階の最大のメリットは家賃の安さです。
1階は同じ建物で同じ間取りでも、2階以上の上層階に比べて月1,000〜4,000円程度安く設定されていることが多いです。
月額の家賃差が1,000〜4,000円の場合、年間で12,000〜48,000円の節約となり、長期的に見ると大きな差になります。
浮いた家賃を貯金や趣味に回せるのは、1階の大きな魅力の一つと言えるでしょう。
②階段やエレベーター不要
1階は階段やエレベーターを使わずに直接出入りできるため、日常生活が格段に楽になります。
2階以上の階に住んだ場合と比較して、重い買い物袋や宅配荷物の受け取りもスムーズです。
災害時にはエレベーターの停止を気にせず、すぐに避難できる安心感もあります。
とくに高齢者や、小さな子供がいる家庭には大きなメリットです。
③専用庭やテラス付きの物件も
1階の物件には専用庭やテラスが付いているケースも多く、ガーデニングや子どもの遊び場として活用できます。
また、布団やカーペットなどの大型の洗濯物が干せる点も大きなメリットです。
自分だけの屋外スペースがあると、生活の幅が広がり快適に過ごせます。
④下階への騒音を気にしなくていい
1階には下の階がないため、足音や物音を気にせず生活できます。
1階であれば小さな子どもがいる家庭でも音に対するストレスが減り、快適に過ごせます。
ただし壁が薄い場合は上階や隣の部屋に音が響く可能性もあるため、内見時に防音性を必ず確認しましょう。
⑤夏場は上層階より涼しい傾向
1階は上層階と比較すると、夏場は相対的に涼しく過ごせる傾向があります。
暖かい空気は上昇する性質があり、1階と3階で5度以上の温度差が生じることも。
1階は直射日光を受けにくく、上階の部屋が断熱材の役割を果たすため、最上階と比べてエアコンの使用頻度が減る要因となります。
ただし、風通しが悪い立地やアスファルトの照り返しが強い環境では、この効果が得られにくい場合があります。
内見時に通気性や周辺環境を確認しましょう。
また、冬場は2階以上の階と比較して寒くなる傾向があり、暖房費用が増加します。
年間のトータルコストという面では2階以上の階と変わらない点には注意が必要です。
⑥引っ越しが楽
1階の物件に入居する場合、引っ越しが楽になる点は大きなメリットです。
2階以上の階と比較して、大型家具や家電の搬入出が非常にスムーズです。
冷蔵庫や洗濯機、ソファなどの重量物を階段で運ぶ必要がなく、作業時間も短縮できます。
引っ越し費用も抑えられる可能性があり、転勤が多い方や家具の入れ替えを頻繁に行う方にとっては大きなメリットです。
⑦災害時の避難が早い
地震や火災などの災害時、1階が最も早く避難できます。
エレベーターが停止しても影響を受けず、迅速な避難が可能です。
高層階に比べて避難時のリスクが低く、災害に対する安全性が高いといえるでしょう。
防災意識の高い方にとっては、重要な判断材料の一つとなります。
「賃貸の1階はやめとけ」論を年間コストで検証

「家賃が安い」という1階最大のメリットですが、対策費用を含めると本当にお得なのでしょうか。
1LDKの東京都内物件を例に、年間の実質コストを比較します。
年間コスト比較シミュレーション
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項目
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1階
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2階以上
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2階以上との差額
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家賃(月額,年額)
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月額80,500円
年額966,000円
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月額83,500円
年額1,002,000円
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月額-3,000円
年額-36,000円
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除湿対策費
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10,000円
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5,000円
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+5,000円
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防犯グッズ代
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15,000円
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5,000円
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+10,000円
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冷暖房費(年間)
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45,000円
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45,000円
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±0円
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年間実質コスト
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1,036,000円
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1,057,000円
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-21,000円
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※除湿対策費は除湿機の電気代や除湿剤などの消耗品を含みます
※実際のコストは物件の立地、設備、使用状況により大きく異なります
一般的な家賃差額(月3,000円程度)で計算すると、対策費用を含めても1階は年間で約21,000円お得です。
1階は夏場の冷房費を抑えられる一方、日当たりが悪く冬場の暖房費がかさむため、年間の光熱費はほぼ同程度になります。
ただし、家賃差が月1,000円以下の場合は対策コストで逆転することもあります。
気になる方は、物件ごとに簡単に比較してみると良いでしょう。
賃貸入居時の初期費用の内訳については、以下の記事で詳しく解説しています。
賃貸にかかる初期費用とは?内訳と相場、節約方法についても解説
【タイプ別】賃貸1階が本当におすすめな人・避けるべき人の特徴

デメリットとメリットを踏まえ、1階に向いている人と避けるべき人の特徴を整理します。
1階がおすすめな人の特徴5つ
1階に向いているのは以下のような方です。
- 家賃を抑えて貯金したい人
- 小さな子供やペットがいる家庭
- 重い荷物の出し入れが多い人
- 専用庭でガーデニングを楽しみたい人
- 災害時の避難を重視する人
上記の点を重視する方は、1階に入居しても後悔する可能性は低いと言えます。
1階を避けるべき人の特徴5つ
反対に、以下のような方は1階への入居は避けた方が良いでしょう。
- 防犯面に強い不安がある人(特に女性の一人暮らし)
- 日当たりの良さを重視する人
- 虫が苦手で絶対に避けたい人
- 在宅時間が長くプライバシーを重視する人
- 洗濯物を外干ししたい人
上記の点を重視する方は、1階よりも2階以上の物件の方が適していると言えます。。
自身がどのような点を重視するかを整理し、1階でも良いのか2階以上の階でないと厳しいのかを判断できるようにしましょう。

「賃貸の1階はやめとけ」を覆す!快適に暮らせる物件の4条件

1階のデメリットを最小限に抑えられる物件の条件を紹介します。
以下の4つを満たす物件なら、1階でも快適に暮らせるでしょう。
- ①オートロック+防犯カメラ完備
- ②南向きor角部屋
- ③築浅or大規模リノベーション済み
- ④設備が充実している物件
それぞれ詳しく解説します。
①オートロック+防犯カメラ完備
オートロックと防犯カメラが設置されている物件は、1階でも防犯性が格段に高まります。
エントランスに管理人が常駐している物件ならさらに安心でしょう。
最近ではセキュリティ会社と提携し、異常時に警備員が駆けつけるサービスがある物件も増えています。
内見時には防犯カメラの設置位置や窓の施錠方法を確認し、セキュリティ体制について不動産会社に質問しましょう。
②南向きor角部屋
南向きの物件や角部屋であれば、1階でも十分な日当たりと風通しが期待できます。
2方向に窓がある角部屋は通気性が良く、湿気対策にも有効です。
日当たりを重視する場合は内見を日中に行い、実際の採光状況を確認しましょう。
窓の前に高い建物や大きな木がないかもチェックポイントです。
③築浅or大規模リノベーション済み
築浅物件や大規模リノベーション済みの物件は、防湿シートや断熱材、防音フローリングなど最新の対策が施されています。
築浅の物件やリノベーション済みの物件では、湿気やカビ、騒音といった1階の弱点が軽減されているため、快適に暮らせる可能性が高いです。
物件を検討する際は、築年数だけでなくリフォーム履歴も確認しましょう。
④設備が充実している物件
専用庭や広いテラスなどの付加設備がある1階物件は、デメリットを補って余りあるメリットがあります。
とくに専用庭は2階以上の階にはない貴重なスペースです。
設備面で2階以上より優れている物件であれば、1階を積極的に選ぶ価値があると言えるでしょう。
1階だからこそ知っておきたい!火災保険で備えるべきリスク3選

1階で起こり得るリスク に対して、火災保険で備えるべきか どうかを解説します。
以下3つの補償について確認しましょう。
- 盗難被害への備え
- 上階からの水濡れ事故
- 地域によっては水災(浸水)事故
それぞれの項目について詳しく解説します。
盗難被害への備え
1階は空き巣のターゲットになりやすいため、家財保険の盗難補償が重要です。
盗難補償では、現金や貴金属、家電などが盗難被害に遭った場合に補償が受けられます。
家財保険の補償額は、単身世帯で300万円、家族世帯で500万円以上が目安です。
近年では、荷物を非対面で受け取る置き配を利用する機会も増えているので、置き配の盗難にも対応した火災保険を選択すると安心です。
上階からの水濡れ事故
上階からの水漏れで家財が被害を受けた場合でも、必ず賠償を受けられるとは限りません 。
水濡れ事故の原因はさまざまで、
- 上階の居住者の不注意
- 建物の給排水設備や管理上の問題
- 原因が特定できない場合
などが考えられます。
このため、被害に対する賠償が実際に支払われるまでに時間がかかることもあります。
こうした場合でも、家財保険に水濡れ補償を付帯していれば、原因の特定や相手の賠償能力に関係なく、損害に応じた補償を自分の保険で受けることができます。
1階は水濡れ事故の影響を受けやすいため、契約内容を事前に確認し、水濡れ補償を付帯しておくと安心です。
火災保険を自身で選択する際のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
賃貸火災保険は自分で加入できる?メリットや注意点についても解説します
地域によっては水災(浸水)事故にも注意
「⑦浸水被害のリスクがある」でも触れたとおり、1階のお部屋は周辺環境によっては浸水の影響を受けやすい場合があります。
大雨時の内水氾濫や河川の増水など、リスクの大きさは地域ごとに異なるため、物件選びの際には自治体のハザードマップを確認しておくと安心です。
火災保険では契約内容によって水災に関する補償が付帯できるタイプもあるため、必要に応じて補償範囲をチェックしましょう。
まとめ:「賃貸の1階はやめとけ」の答えは人それぞれ!メリット・デメリットを理解して賢く選ぼう

「賃貸の1階はやめとけ」という声がある一方で、家賃の安さや生活の利便性といった大きなメリットも存在します。
デメリットを正しく理解し、物件選びのポイントを押さえれば、1階でも快適に暮らせるでしょう。
この記事の内容のまとめは以下の通りです。
- 1階は防犯・虫・湿気などのデメリットがあるが、家賃の安さや生活の利便性といったメリットも多く、対策費を含めても年間約2万円お得
- オートロック完備・南向き角部屋・築浅物件などの条件を満たせば、1階でも快適に暮らせる
- 1階で起こり得るリスク(盗難・水濡れ・水災)は火災保険で備えられるため、物件選びと保険加入がセットで重要
とくに盗難補償や水濡れ補償、水災補償といった火災保険の備えがあれば、1階で起こり得るリスクにも対応できます。
安心して暮らすためには、物件のリスクを理解し、必要な補償を備えておくことが重要です。
内見時のチェックと火災保険の内容確認を忘れずに行いましょう。

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