
はじめに
賃貸物件に引っ越すときに、初期費用がどれくらいかかるか不安に感じている方もいるのではないでしょうか?この記事では、賃貸物件の初期費用にはどのような項目があるのか?また初期費用を安くする方法について解説します。
賃貸の初期費用とは
賃貸の初期費用のなかには、どのような項目が含まれているのでしょうか?初期費用の詳細や、初期費用の決まり方、計算方法について解説します。
初期費用に含まれるもの
賃貸物件の初期費用のなかには、次のような項目が含まれています。
- 敷金・礼金
- 前家賃
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 鍵交換費用
- その他
代表的な費用の詳細について解説します。
敷金・礼金
敷金とは、契約期間中に家賃の滞納があったときや、部屋を損傷させたときの修理費用の担保として、家主や管理会社に預けておくお金のことです。
退去時に、預けてあった敷金から、家賃の滞納や損傷の修繕費を引いた金額が返還されます。家賃の滞納がなく、通常の範囲内で部屋を利用していれば、基本的に敷金の一部または全部が戻ってきますが、敷金でまかないきれないときは、別途費用を請求される可能性があります。
一方、礼金とは、家主に対しての「お礼」として支払うお金です。かつて賃貸物件が不足しているときに、礼金を渡して大家に対して感謝を伝えることが一般的だったようです。礼金は退去時に返還されることはありません。
前家賃
前家賃とは入居する日の翌月分の家賃のことです。例えば4月15日に入居する場合、15日から4月30日までの家賃を日割り計算した金額と、5月分の家賃を支払います。
賃貸契約では、一般的に家賃は前払いとなっており、当月分の家賃を前月に支払うことが多くなっています。
仲介手数料
仲介手数料とは、賃貸物件を仲介してくれた不動産会社に支払う報酬です。
不動産会社は物件の選定から、契約条件の交渉、重要事項説明や賃貸借契約締結など、さまざまな手続きをサポートしてくれます。
仲介手数料の額は不動産会社によって異なりますが、「家賃0.5~1ヶ月分+消費税」と設定されるケースが一般的です。
火災保険料
火災保険は火災や自然災害などで、建物や家財が損害を受けたときに支払われる保険です。
賃貸のアパートやマンションは自身の持ち物ではないため、建物の火災保険に加入する必要はありません。しかし家具や家電製品といった家財は、自身の持ち物なので火災保険による備えが必要です。
また入居している期間中、洗濯機のホースが外れて水が漏れ、床や壁を損傷させてしまうなど、入居している部屋に損害を与える可能性があります。
このように偶然の事故で家主に法律上の損害賠償責任を負ったとき、借家人賠償責任保険に加入していれば補償されます。
賃貸向け火災保険は、家財の火災保険と借家人賠償責任保険にセットで加入し、入居時に保険料を1~2年分まとめて支払うのが一般的です。
鍵交換費用
賃貸住宅に住むときの初期費用として、鍵交換費用も検討する必要があります。鍵交換費用とは、鍵とシリンダー(鍵穴部分)の交換に伴なってかかる費用のことです。
以前の入居者が合鍵を作っている可能性もあるため、防犯という点を考えれば、鍵交換はしておいたほうが良いでしょう。
その他(保証会社利用料、クリーニング費用など)
多くの賃貸物件では、家賃の支払いや原状回復費用を担保するために、連帯保証人もしくは保証会社のいずれかが必要とされています。かつては個人の連帯保証人を立てることが一般的でしたが、現在では保証会社の利用が主流となっています。
保証会社を利用する場合、初回の保証料は家賃の30%~100%程度が相場とされています。また、契約更新時には1万円~2万円程度の更新料が発生することが一般的です。ただし、保証会社によって料金体系は異なるため、契約前に詳細を確認することが重要です。
また、クリーニング費用も初期費用として支払う場合があります。通常、退去時のクリーニング費用は敷金から差し引かれますが、一部の物件では入居時に前払いとして請求されることがあります。特に敷金・礼金0円の物件では、この方式を採用していることがあります。
契約前に支払いのタイミングを確認しておきましょう。

初期費用はどうやって決まる?
初期費用は物件や地域によって異なります。国土交通省住宅局「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、敷金と保証金がある物件の比率は以下の通りです。
【敷金・保証金の有無(令和5年度)】
|
三大都市圏合計 |
首都圏 |
中京圏 |
近畿圏 |
あり |
51.5% |
59.8% |
38.0% |
40.9% |
※保証金・・賃貸の保証金とは賃貸物件を契約する際、担保として貸主に預けるお金のこと。
また同報告書によると、敷金と保証金は家賃の1~2ヶ月分と回答しています。中京圏や近畿圏は敷金と保証金が高めに設定されている比率が高いため、家賃にもよりますが初期費用が高額になる可能性があります。
【敷金・保証金の月数(令和5年度)】
|
三大都市圏合計 |
首都圏 |
中京圏 |
近畿圏 |
1ヶ月ちょうど |
63.4% |
69.8% |
40.0% |
55.7% |
2ヶ月ちょうど |
19.8% |
14.9% |
28.6% |
31.1% |
礼金の有無についても、地域によって傾向が異なります。
【礼金の有無(令和5年度)】
|
三大都市圏合計 |
首都圏 |
中京圏 |
近畿圏 |
あり |
38.3% |
44.7% |
17.4% |
36.9% |
礼金がかかる物件の場合、首都圏と中京圏は家賃の1ヶ月分としているケースが多く、近畿圏が少なくなっています。
【礼金の月数(令和5年度)】
|
三大都市圏合計 |
首都圏 |
中京圏 |
近畿圏 |
1ヶ月ちょうど |
75.9% |
82.0% |
80.0% |
58.2% |
2ヶ月ちょうど |
11.8% |
8.0% |
- |
25.5% |
敷金や保証金、礼金を計算するときの計算の基になる家賃についても確認しておきましょう。家賃は首都圏が最も高く、中京圏が最も安くなっています。
また集合住宅よりも一戸建てのほうが家賃が高めのため、相対的に初期費用は一戸建てのほうが高額になる傾向があります。
【月額家賃】
|
三大都市圏合計 |
首都圏 |
中京圏 |
近畿圏 |
一戸建て |
集合住宅 |
平均 |
78,737円 |
83,506円 |
69,068円 |
73,575円 |
90,236円 |
77,034円 |

賃貸の初期費用を計算してみる

賃貸の初期費用の詳細がわかったところで、実際に初期費用を計算してみましょう。また初期費用のシミュレーションができるサイトも紹介します。
初期費用の計算式
前章で紹介した統計を基に、初期費用を実際に計算してみましょう。
【前提条件】
・首都圏の賃貸物件
・家賃:83,506円/月※
・敷金、礼金、前家賃:それぞれ家賃1ヶ月分
・仲介手数料:家賃1ヶ月分+消費税
・保証料:(家賃1ヶ月分+共益費4,078円※)×0.5
項目 |
費用 |
敷金 |
83,506円 |
礼金 |
83,506円 |
前家賃 |
83,506円 |
仲介手数料 |
91,856円 |
保証料 |
43,792円 |
火災保険料(2年分) |
10,000円 |
鍵交換費用 |
15,000円 |
合計 |
411,166円 |
※国土交通省住宅局「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」より
上記の事例の場合、初期費用は家賃の約4.9倍となります。
計算ツールの利用もおすすめ
不動産会社のなかには、家賃はいくらか、礼金は何ヶ月分必要かといった条件を入力すると、自動的に初期費用を計算してくれるシミュレーションを用意している場合があります。
代表的なシミュレーションツールを紹介します。
- ホームメイト
家賃や敷金・礼金の月数など、必要項目を入力するだけで簡単に初期費用が計算できます。
- CHINTAI
自由入力欄があるため、その物件固有の条件があるときに便利です。
- R-net
あくまでも概算ですが、入居時期によって変わる初期費用である、変動初期費用も知りたいときにおすすめです。
賃貸の初期費用はいつ、どうやって支払う?
賃貸の初期費用はまとまった金額になるため、いつ支払うのか?どのような支払方法があるのか?気になる方もいるでしょう。以下、初期費用の支払時期や支払方法について解説します。
支払時期
初期費用を支払うタイミングは物件によって異なります。
入居審査後、重要事項説明を受け、各種書類に署名・捺印をすることで契約締結となりますが、重要事項説明を受けた後に、初期費用の一部を手付金として支払いを求められる場合があります。
支払い方法
支払方法は現金と銀行振込が一般的ですが、不動産会社によってはクレジットカード払いも対応しています。
初期費用を一括で支払うことが難しい場合、分割払いに応じてもらえる可能性があります。ただし敷金・礼金のみ分割可能としているケースも多いため、事前に確認が必要です。
クレジットカードで支払える場合は、カードの分割払いを利用する方法もあります。クレジットカード会社に分割可能か確認してみましょう。
初期費用を節約する方法
賃貸物件のなかには、敷金・礼金がかからない物件や、仲介手数料が無料あるいは割引になる物件もあります。またフリーレント物件を利用することで一定期間、家賃の支払いをしなくて済む場合もあります。
賃貸の初期費用を節約する3つの方法を見ていきましょう。
敷金・礼金なし物件を探す
初期費用を抑えたいときは、敷金・礼金なしの物件を選びましょう。敷金や礼金の相場は、それぞれ家賃の1ヶ月分なので、初期費用の相場が家賃の5ヶ月分とすると約40%と大きな割合を占めます。
不動産会社の賃貸物件検索システムで、敷金・礼金なしという条件で絞り込んで検索することもできますし、不動産会社に直接問い合わせる方法もあります。
ただし敷金・礼金がないというだけで判断せず、必ず内見をして実際の物件の状態や、周辺の居住環境、治安なども確認しておきましょう。
仲介手数料無料・割引物件を探す
仲介手数料は家賃の1ヶ月分+消費税が相場で、初期費用の相場(家賃の5ヶ月分)のうち約22%を占めます。
賃貸物件のなかには、仲介手数料を無料にしたり割引にしたりしているものもあります。少しでも初期費用を抑えたいときは、こうした物件を選びましょう。
仲介手数料なしの物件も、不動産会社のポータルサイトで条件を指定して絞り込みをすれば、検索可能です。
フリーレント物件を探す
フリーレント物件とは、入居後数日から数週間、1ヶ月間など一定期間は、家賃がかからない賃貸物件のことです。
フリーレント物件は一定期間、家賃を支払うことなく敷金・礼金、仲介手数料、保証料などの支払いだけで済むため、入居初期にかかる費用を抑えられるメリットがあります。
また賃貸から賃貸に引っ越す場合、解約と入居のタイミングによっては、旧居と新居の両方に家賃を支払う二重家賃が発生することがありますが、フリーレント物件への引っ越しなら、二重家賃のリスクが軽減します。
ただし短期で解約をすると、違約金が請求されるため、入居後どれくらいの期間までの解約で違約金がかかるのか確認しておきましょう。
家賃は無料でも管理費や共益費がかかるケースもあるため、注意が必要です。
「もう一工夫」で初期費用をさらに下げる

ここでは物件選び以外に、初期費用を抑えるためのもう一工夫を紹介します。
引っ越しのタイミングを工夫する
賃貸物件に住む場合初期費用の他、引っ越し費用も考慮する必要があります。引っ越し費用は繁忙期と閑散期で大きく価格が異なるため、2月~4月の繁忙期を避けるようタイミングを工夫しましょう。
その他、引っ越し費用を抑えられるタイミングとしては、土日祝日や月末・月初の他、大安など縁起が良い日を避けるといった方法があります。
午後に荷物が届く午後便、時間帯指定をしないフリー便でも引っ越し費用を抑えることが可能です。
家賃が安いエリアを選ぶ
先の章で紹介したように、家賃や住むエリアによって異なります。引っ越すときは、家賃が安いエリアを選びましょう。家賃は敷金・礼金、仲介手数料、前家賃などを計算するときの基になる金額のため、家賃が安ければ、相対的に初期費用も抑えられます。
また2階以上の物件の1階部分、大通り沿いや繁華街、最寄り駅から遠い、急行や快速が泊まらない駅に近い物件などは、家賃が安い傾向があります。治安や利便性について慎重に見極める必要がありますが、初期費用を抑えたい方は検討してみましょう。
火災保険を自分で選ぶ
賃貸住宅に住む際、不動産会社から火災保険の加入を勧められることがあります。契約期間中に賃貸物件に損害を与えてしまう可能性があるため、火災保険の加入は必須ですが、必ずしも不動産会社に勧められたものに加入する必要はありません。
火災保険を自分で選ぶメリットと注意点を紹介します。
火災保険を自分で選ぶメリットとして、複数社の火災保険を比較できるため、自身に最もあったプランが選べる、予算を考慮して補償を調整できる点などが挙げられます。
多くの保険会社の商品を比較することで、不動産会社が紹介する火災保険よりも自身にあったものが見つかる可能性があります。
自分で火災保険を選ぶ際の注意点は、家財の補償の他に、借家人賠償責任保険や個人賠償責任保険など必要な補償が含まれているかを確認することです。
地震保険は火災保険に付帯する形で加入するのが一般的ですが、すべての火災保険で地震保険が付帯できるわけではないため、地震によるリスクをカバーしたい場合は選択肢を広げることも検討しましょう。
なお不動産会社からの指示で特定の補償が必要とされる場合もあるため、契約条件を事前に確認することも重要です。
自分で火災保険を選ぶときは、補償内容や補償額を十分理解しておくことが大切です。

まとめ
賃貸住宅に住む場合、家賃の約5ヶ月分の初期費用がかかり、入居審査後1~2週間後までには支払いが必要です。初期費用を抑えるには、敷金や礼金なしの物件を探す、仲介手数料が無料あるいは割引の物件を探す、フリーレント物件を探すといった方法があります。
賃貸住宅に住むようになれば、引っ越し代や、新しい家具や家電製品の購入費用など、なにかとお金がかかりがちです。少しでも初期費用を抑えるよう、この記事を参考に工夫をしてみてください。
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