賃貸物件の入居申込をした後、「他に良い物件が見つかった」場合や、「仕事や家庭の事情」などのやむを得ない理由でキャンセルしたくなる場合もあると思います。
「審査後にキャンセルはできるのか」「違約金が発生するのか」などわからないことが多く不安に思う方も多いでしょう。
しかし、不安だからとキャンセルを先延ばしにしていると、キャンセルできる期間が過ぎ、余計な費用がかかってしまう可能性も。
そこで本記事では、賃貸の入居の際「いつまでならキャンセルができるのか」や「キャンセルできる期間を過ぎた場合はどうなるのか」について法的根拠を踏まえて詳しく解説します。
この記事を読めば、トラブルを避け、スムーズにキャンセルの手続きができます。
賃貸のキャンセルについて悩んでいる方はもちろん、これから賃貸の入居申込をする方も、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
賃貸物件を契約する際の手続きは、大きく5つのステップに分かれています。
キャンセルができるかどうかは、どのステップにいるかによって異なるため、まずは全体の流れを把握して現在どの手続きをしているのかを確認しましょう。
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ステップ |
内容 |
キャンセルの可否 |
|
①入居申込 |
入居申込書を提出し、申込金を支払う |
◎可能 |
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②入居審査 |
大家さんや保証会社が支払い能力などを審査 |
◎可能 |
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③重要事項説明 |
宅建士が契約内容の重要事項を説明 |
◎可能 |
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④契約書への署名・捺印 |
賃貸借契約書に署名・捺印をして契約 |
✖️不可 |
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⑤鍵の受け渡し・入居 |
初期費用を支払い、鍵を受け取って入居 |
✖️不可 |
上記の表からもわかる通り、原則として「契約書への署名・捺印」をするまでであればキャンセルができます。
ただし、キャンセルする場合は不動産会社への早めの連絡が必要になります。
なお、2022年5月の法改正により、オンラインで契約手続きを行う電子契約も可能になりました。
電子契約の場合は、双方が電子署名を完了した時点で契約締結となります。
そのため、電子署名が完了する前であればキャンセルが可能です。
賃貸契約の流れについてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事で解説しています。
入居申込をする前の、「希望条件の整理」から詳しく解説しているので、賃貸への引越しを検討している方は参考にしてみてください。
賃貸契約の流れを初心者向けに徹底解説!期間・費用・注意点まとめ
入居審査が通った後でも契約書に署名・捺印をしていなければキャンセルは可能です。
キャンセル可能なタイミングや契約成立の定義、費用面について詳しく解説していきます。
入居申込をすれば、契約が成立すると思っている方も多いと思いますが、実際はそうではありません。
入居申込はあくまで「借りたい」という一方的な意思表示に過ぎず、これに対し、賃貸借契約は貸主の「貸す」という意思と、借主の「借りる」という意思、双方の合意があって初めて成立する『諾成契約』です。
つまり、申込みの時点ではまだ双方の合意がないため、法的な拘束力は生じません。
賃貸の入居では、契約書への署名・捺印時に契約が成立します。
賃貸借契約において、宅地建物取引業法第35条では、重要事項説明を「契約成立前」に行うことを義務付けています。
そのため、実務上は以下の流れで契約が成立します。
①入居申込
②入居審査
③重要事項説明
④契約書への署名・捺印←ここで契約成立
契約書への署名・捺印前であれば契約成立前なので、キャンセルは法的にも問題ありません。
その際は、申込金(預かり金)も全額返還されます。
なお、重要事項説明を受けただけでは契約は成立しないため、説明を受けた後でも契約を結んでいなければキャンセルは可能です。
一方で、民法上は「貸す」「借りる」という双方の意思表示があった時点で契約が成立すると考えられており、これを前述のとおり「諾成契約」といいます。
この考え方を根拠に、一部の不動産会社では「大家さんが入居の承諾をした時点で契約成立」と主張する場合があります。
しかし、重要事項説明前に契約が成立していることを主張することは、宅地建物取引業法第35条に抵触する可能性があります。
トラブルを避けるため、申込時に「キャンセルの場合はいつまでに連絡すれば良いのか」を事前に確認し明確にしておきましょう。
契約書への署名・捺印前であれば、キャンセル料は一切発生しません。
宅地建物取引業法施行規則第16条の11第2号により、不動産会社が契約前の申込撤回時に預かり金の返還を拒否することは禁止されています。
そのため、契約成立前のキャンセルでは以下のような費用は発生しません。
申込時に支払った申込金(預かり金)についても、原則、全額返金されます。
不動産会社から「キャンセル料が必要」「事務手数料を差し引く」などと言われた場合は法律に違反している可能性があります。
そのため、安易なキャンセルは避けた方が良いでしょう。
複数の物件に同時に申し込むことも、後々のトラブルに繋がる可能性があるため控えましょう。
キャンセルの連絡方法や伝え方次第で、その後の対応がスムーズになります。
ここでは、トラブルを避けるための適切な伝え方を解説します。
キャンセルを伝える際は、以下の3点に注意しましょう。
審査通過後は、大家さんや管理会社が入居の準備を進めているためキャンセルする意思が固まったら、できるだけ早く電話で不動産会社に連絡しましょう。
「他に良い物件が見つかった」「家族の反対があった」など、
理由を正直に伝え、具体的に説明すると不動産会社の理解も得やすいです。
キャンセルを伝える際は、以下の流れで伝えるとスムーズです。
1. 謝罪の言葉から始める
2. 具体的なキャンセルの理由を簡潔に説明
3. 申込金の返還について確認
4. 今後の手続きについて質問
相手への配慮を忘れず、誠実な態度で対応しましょう。
入居審査後のキャンセルには、いくつか注意するポイントがあります。
特に重要な3つの注意点について、法的根拠を踏まえて詳しく解説します。
契約前であれば申込金(預かり金)は全額返還されます。
ただし、よく似た名称で「手付金」というものがあり、こちらはキャンセルしても返還されません。
申込金と手付金の違いを理解しておくことで、不当な請求を避けることができます。
申込金と手付金の主な違いは以下の通りです。
|
項目 |
申込金(預かり金) |
手付金 |
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支払うタイミング |
契約前(申込時) |
契約時 |
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法的性質 |
一時的な預かり金 |
契約成立の証拠金 |
|
キャンセル時 |
全額返還される |
返還されない場合がある |
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金額の目安 |
家賃1ヶ月分以内 |
契約内容により異なる |
申込金を支払う際は、「預かり証」を発行してもらい、以下の内容が記載されているかを確認しましょう。
契約前の申込金を「手付金」として扱おうとする不動産会社もありますが、これは違法です。
申込時に支払うお金は、名目に関わらず「預かり金」として扱われ、契約が成立しなければ全額返還されます。
契約締結後は「解約」扱いになり、初期費用の多くは返還されません。
契約書に署名・捺印した時点で、賃貸借契約は法的に成立します。
そのため、その後のキャンセルは「解約」として扱われ、通常の退去と同じ手続きが必要になります。
契約締結後に解約をした場合、以下の費用は原則として返還されません。
敷金については部屋を使用していないため、全額または一部が返金される可能性があります。
また、火災保険も自分で保険会社に連絡すれば、未経過分が返還されるケースもあるでしょう。
多くの賃貸借契約には「短期解約違約金条項」が設定されています。
これは、契約後一定期間以内(通常は1年)に解約する場合、違約金を支払う必要があるという条項です。
短期契約違約金の相場は、家賃の1〜2ヶ月分が一般的です。
また、賃貸借契約では「解約予告期間」があり、通常は1〜2ヶ月前までに解約の申し出をする必要があります。
契約直後であっても、この予告期間分の家賃は支払わなければならないケースも多いため注意しましょう。
賃貸借契約にはクーリングオフ制度は適用されません。
クーリングオフとは、契約後一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。
しかし、賃貸借契約はクーリングオフの対象外となっています。
宅地建物取引業法37条の2では、クーリングオフが適用されるのは主に不動産の売買契約であり、特定の要件(事務所以外の場所での契約など)を満たした場合に限られます。
賃貸借契約は、この要件に該当しません。
そのため「契約後8日以内ならキャンセルできる」という認識は誤りです。
契約書に署名・捺印をしたら、基本的にはキャンセルできないと考えておきましょう。
賃貸の入居審査後のキャンセルは、契約書に署名・捺印する前であれば法的に可能です。
この記事の重要なポイントをおさらいしておきましょう。
賃貸をキャンセルする際のトラブルを避けるために、申込時に契約成立のタイミングや返還条件を確認しておくと良いでしょう。
やむを得ずキャンセルする場合は、できるだけ早く不動産会社に連絡し、誠意を持って対応しましょう。
キャンセル料がかからなくても、引越し自体は何かとお金がかかるイベントです。
次の物件を探す際も、少しでも初期費用は抑えたいものですね。
初期費用の抑え方や、抑える方法の一つとして「火災保険を自分で選択する方法」などの解説記事も用意していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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