賃貸借契約には契約期間があり、契約期間満了後も引き続き住み続けるためには契約の更新が必要です。
契約更新の際には、更新料やその他の費用が発生することもあるため、更新時期が来る前に準備をしておかなければなりません。
この記事では、賃貸住宅の更新料の位置づけや費用の目安、費用の支払い時期の他、更新料以外にかかる費用とその相場について解説しています。
賃貸住宅に住み続けていると、更新料の支払いを求められる場合があります。更新料はどのような位置づけの費用なのでしょうか?まずは更新料の定義や、支払義務について解説します。
更新料とは、賃貸マンションやアパートに住む際に契約する賃貸借契約の契約期間が満期を迎え、更新するときに入居者が支払う費用のことです。
賃貸マンションやアパートといった賃貸住宅に住むときは、入居時に賃貸借契約を締結します。この際、契約期間を取り決めるのが一般的です。
このため契約期間満了後も同じ物件に住み続けたい場合、契約を更新しなければなりません。賃貸借契約に更新料の定めがある場合は更新の際に、月々の家賃とは別に更新料の支払いが必要になります。
賃貸借契約の契約期間は2~3年が多いようです。つまり更新料がかかる物件の場合、2~3年に一度、更新料を用意しておかなければなりません。
賃貸借契約書に更新料の定めがない場合、更新料は慣習に過ぎないため、法的な支払い義務はありません。しかし賃貸借契約書に更新料の定めがあるときは、支払い義務が発生します。
平成19年~20年の間に、貸主を相手に更新料が消費者契約法10条等により無効であるとして、返還を求めていた裁判で、最高裁は平成23年7月15日、「更新料の条項が契約に明記されていれば、賃料や更新期間などから判断して高額すぎなければ有効」という判決を下しています。
更新料は一般的に、いくらくらいかかるのでしょうか?ここでは更新料の金額の目安や、更新料の地域差について解説します。
更新料は家主が自由に設定できます。国土交通省住宅局「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、三大都市圏の場合、更新料の相場は家賃の1ヶ月分未満~1ヶ月分ちょうどが全体の約9割を占めていることが分かります。
【更新料の月数(令和5年度)】
三大都市圏 | |
1ヶ月未満 | 22.5% |
1ヶ月ちょうど | 66.4% |
1ヶ月超2ヶ月未満 | 3.0% |
2ヶ月ちょうど | 5.2% |
2ヶ月超3ヶ月未満 | - |
3ヶ月ちょうど | 2.2% |
3ヶ月超 | 0.7% |
一方で、更新料を家賃の1ヶ月超としている物件もあります。個別の金額は賃貸借契約書に記載されるため、契約締結前に確認することが大切です。
更新料の有無については地域差があります。首都圏では必要とされるケースが多いのに対し、中京圏や近畿圏では不要というケースが多いようです。
【更新料の有無(令和5年度)】
首都圏 | 中京圏 | 近畿圏 | |
あり | 65.1% | 22.8% | 25.5% |
なし | 21.6% | 54.3% | 55.7% |
無回答 | 13.3% | 22.8% | 18.8% |
引用元:国土交通省 住宅局 令和5年度住宅市場動向調査報告書
更新料の金額も地域によって異なります。首都圏では、家賃の1ヶ月未満~1ヶ月ちょうどとするケースが全体の約92%を占めており、最も一般的です。一方、中京圏では家賃の2ヶ月から3ヶ月とするケースが約16.7%、近畿圏では同様の条件が約17.2%を占めており、首都圏に比べて高い水準のケースが一定の割合で見られます。
【更新料の月数(令和5年度)】
首都圏 | 中京圏 | 近畿圏 | |
1ヶ月未満 | 22.5% | 38.9% | 14.3% |
1ヶ月ちょうど | 69.7% | 33.3% | 62.9% |
1ヶ月超2ヶ月未満 | 2.8% | 5.6% | 2.9% |
2ヶ月ちょうど | 4.6% | 5.6% | 8.6% |
2ヶ月超3ヶ月未満 | - | - | - |
3ヶ月ちょうど | 0.5% | 11.1% | 8.6% |
3ヶ月超 | - | 5.6% | 2.9% |
引用元:国土交通省 住宅局 令和5年度住宅市場動向調査報告書
更新料はどのタイミングで支払う必要があるのでしょうか?ここでは更新料の支払い期限や、更新料を支払わなかったときのリスクについて解説します。
更新料は賃貸借契約を更新するときに支払います。
契約期間が満了しても、大家と入居者の合意があれば更新が可能です。契約更新日が近くなると、家主や不動産会社から更新の意思確認と、更新料に関する通知が届きます。通知が届く時期は物件によって異なります。
引き続き現在の賃貸物件に住み続けたいときは、更新契約書、その他指定された書類に必要事項を記入して、更新料を支払いましょう。
支払い期日は家主や不動産会社によって異なります。通知書の記載を必ず確認して、期日までに支払いを済ませましょう。
支払方法は家主や不動産会社によって異なりますが、口座への振りこみ、現金払い、普段家賃を支払っている口座から引き落としなどの方法があります。
契約書に更新料の記載がある場合、更新時に更新料の支払いが必要です。支払い期日を過ぎてしまうと、遅れた期間に応じた遅延利息を請求される可能性があります。
更新料の支払いが必要にもかかわらず拒否した場合、家主が契約解除をするための正当事由に該当する可能性があり、立ち退きを迫られるかもしれません。
期限内の支払いが難しいときは、家主や不動産会社に相談すれば、支払い期日を引き延ばしてくれる可能性もあります。まずは相談してみましょう。
賃貸借契約満了に伴い、火災保険料や保証料の支払いも必要な場合があります。以下、更新料以外にかかる費用の概要と相場について解説します。
火災保険の保険期間や支払い方法は自身で選ぶことが可能です。保険料の相場は補償内容や保険金額で異なります。
補償内容にもよりますが、賃貸住宅の火災保険の役割は大きく2つあります。1つは入居者の家具や家電製品といった家財の補償です。火災や自然災害などで、入居者の家財が損害を受けたときに補償します。
もう1つは、火災や水濡れなどで入居している部屋に損害を与えてしまい、家主に対して法律上の損害賠償責任を負ったときの損害賠償金を補償する、借家人賠償責任保険の役割です。
なお、必ずしも不動産会社がおすすめする火災保険に加入する必要はありません。自分で火災保険を選ぶときは、補償内容や補償額が十分かどうか、しっかりと確認しましょう。
賃貸契約時に保証会社を利用していると、更新時にも保証料の支払いが必要になる場合があります。
保証料とは、借主が保証会社を利用する際に支払う費用です。保証会社の利用は、連帯保証人を立てられない場合や、物件の契約条件によって必要となる場合に求められます。
更新時の保証料は保証会社によって異なります。
保証会社には、以下の4種類があります。
契約更新時には、保証会社の種類や契約内容によって、保証料の再支払いが必要な場合と不要な場合があります。
賃貸借契約を更新する際、更新事務手数料がかかる場合があります。更新料は家主に支払いますが、更新事務手数料は不動産会社に支払います。
なかには更新事務手数料がかからないケースもあるため、賃貸借契約を確認しましょう。
賃貸借契約の更新時には、契約書に更新料の記載がある場合、必ず支払いが必要です。更新料を支払わないと契約解除や立ち退きを求められるリスクがあるため、通知された期日までに支払いを済ませましょう。
また、更新時には更新料以外にも火災保険料や保証料、場合によっては更新事務手数料が発生する可能性があります。これらの費用を事前に確認し、準備しておくことが大切です。
更新料やその他の費用に関する情報をしっかり確認し、スムーズな契約更新に備えましょう。
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